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2級の後遺障害で1級の慰謝料が請求できる場合

 初めに 
「赤い本」では1級の後遺障害慰謝料が2800万円、2級の後遺障害慰謝料は2370万円とされています。
しかし、別表第1、第2級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」は1級の2800万円を請求できる場合が多くあります。
その理由を説明したいと思います。

 自賠責保険等級認定の仕組み
別表第1、第2級1号の高次脳機能障害(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの)が認定されたとします。
重度の後遺障害が生ずる事故では他にもさまざまな後遺障害が生じています。その中に13級以上の後遺障害が1つでもあった場合は「13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある時は重い方の後遺障害の等級を1級上げる」という自賠責の基準によって等級がアップします。

従って、別表第1、第2級1号の高次脳機能障害の他に例えば12級の後遺障害が認定された場合は1級と認定されるはずです。

ところで自賠責保険の等級表では別表第1と別表第2があり、別表第1、1級1号は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」とされています。また、別表第2の1級は6つの後遺障害が列挙されています(例えば1級1号は「両眼が失明してもの」です)。

それでは別表第1、第2級1号の高次脳機能障害に12級の後遺障害が併合された場合は別表第1、第1級1号になるのでしょうか、それとも別表第1の1級になるのでしょうか。

別表第1、第2級1号の高次脳機能障害が1級繰り上がっても「随時介護」が「常時介護」になるわけではないので別表第2の1級になります。
しかし、自賠責保険における認定システムでは別表第1、第2級1号のままであり、等級が繰り上がることはありません。その理由は何故かということが問題となります。

 別表第1と別表第2の自賠責保険金の項目の違い 
別表第1、第2級1号も別表第2の1級も自賠責保険金の限度額も共に3000万円です。限度額が同じなのですから併合1級として認定しても構わないようにも思えます。
しかし、実は別表第1の方が自賠責上は有利な算定がなされます。例えば、以下のようなものです。
まず、慰謝料の違いですが
別表第1、1級は1600万円、2級は1163万円です。
別表第2、1級は1100万円、2級は958万円です。
つまり、別表第1、2級のほうが別表第2、1級よりも慰謝料において有利になっているのです。

次に、別表第1、1級、2級では別表第2では認められない「初期費用」が認められます。「初期費用」としては1級は500万円、2級は205万円が認められます。慰謝料と逸失利益がしか認められない別表第2とは大きな違いがあります。

つまり、「慰謝料」と「初期費用」で別表第1、2級は別表第2、1級よりも有利なのです。

通常の場合、別表第1、2級でも、別表第2、1級でも限度額の3000万円が支払われるので前者が後者より有利であるということは表面上は現れません。しかし、高齢者などの場合は限度額まで行かないので、その差が現れます。

以上の理由で別表第1、2級に12級が併合されても別表第2、1級が認定されることはなく、自賠責上、より有利な別表第1、2級が認定されることになるのです。

 慰謝料額について
以上から別表第1、2級が認定された場合、他の後遺障害が認定されても、等級はアップしませんが、それは単なる自賠責の等級認定システムに基づく技術的な理由に過ぎないのですから、実質は別表第2、1級であると言えます。
そのため、2級でも1級の慰謝料である2800万円を請求できることになります。

「赤い本」では「平成14年4月1日以降の事故で、後遺障害等級別表第1の2級の後遺障害と同別表2の後遺障害があった場合、自賠責保険では併合による等級の繰上げがないが、慰謝料の算定にあたっては、平成14年4月1日より前の事故と同様に、併合により等級の繰り上げをして算定する」と記載されています。

判例集を見てみますと、弁護士の多くは2級で1級の慰謝料が請求可能にもかかわらず、2級の慰謝料を請求しています。恐らく慰謝料は機械的に基準を適用するものと考えているのが理由と思われます。

高次脳機能障害において別表第1の2級が認定された際はこうした盲点がありますので注意すべきです。