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高次脳脳機能障害異議申立の成功例

 9級10号が7級4号になった例 
(1) 異議申立をした経緯
9級10号の要件は「神経系統または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。
また、7級4号は「神経系統または精神に障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができないもの」です。

明白に高度の高次脳機能障害が残存したならば、証明は簡単なのですが、「労務が相当に制限された」と「簡易な労務しかできない」との差は極めて微妙なものがあり、このあたりの異議申立が一番、難しいと言えるでしょう。

当初、私は被害者の方が比較的元気なので9級10号でも仕方がないかと思っていましたが、等級認定後、被害者が自殺未遂事件を起こし、家族も私もその時、初めて 被害者の高次脳機能障害の重篤さに気づきました。また、医師からも従来の仕事に復帰するのは無理と宣言をされました。

一度、等級が出たので訴訟提起の準備をしておりましたが、一旦、訴訟提起は中断して異議申し立てを先行させることにしました。

(2) どのように異議申立をしたか
A  高次脳機能障害整理表に基づく医師の評価
自賠責保険では「労務が相当に制限された」、「簡易な労務しかできない」等の抽象的な表現が用いられておりますが、労災では高次脳機能障害整理表に基づき、より緻密な認定がなされています。
そこで、高次脳機能障害整理表に基づき、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・耐久力について主治医に評価を求めました。高次脳機能障害整理表を添付して弁護士照会をするというやり方です。この医師の回答から労災基準で9級より重いという結論が導かれました。

B 両親の陳述書
最初の認定が出るまでは私の窓口は被害者本人でしたが、両親に窓口を変更しました。
そして、両親が被害者の日常生活、家庭内で高次脳機能障害の現れと見られる行動を列挙する陳述書を作成しました。

(3) 結論
以上の資料を添付して、私が被害者の代理人として異議申立をしました(被害者請求の方法)。その結果、9級10号が7級4号と変更になりました。

 5級2号が3級3号になった例 
(1) 異議申立をした経緯
5級2号は「神経系統または精神に著しい障害を残し、特に簡易な労務以外の労務に服することができないもの」、3級3号は「神経系統または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」です。
被害者は5級2号に認定されましたが、私の目から見て「終身労務に服することができないもの」が妥当と考えました。被害者に何回もお会いしており、後遺障害の程度は5級程度とはどうしても思えなかったからです。

被害者の高次脳機能障害は精神症状と片麻痺ですが、認定理由書には精神症状については正しく評価がされていると感じました。
問題は片麻痺でした。片麻痺も相当に重度でしたが、認定理由書には麻痺は軽度と評価がされており、その点が問題だと判断し、異議申し立てをすることにしました。

(2) どのように異義申立てをしたか
認定理由の精神的な症状については問題がなかったことから、異議申立理由は片麻痺一本に絞りました。

麻痺がどのような状態ならば高度、中度、軽度かは自賠責保険には定めていなせんが、労災の認定基準にかなり詳細な基準が定められています。
例えば、「(上肢で)麻痺が高度」とは「上肢の運動性・支持性が殆ど失われ、基本動作ができないもの」とされています。また、その具体的な例が挙げられています。

また、麻痺の程度を評価するには「ブルームストロームの回復ステージ」のどの段階に当てはまるかという方法でなされます。

そこで、弁護士照会により主治医に麻痺の部位を「上肢」「手指」「下肢」にわけ、ブルームストロームの回復ステージでどの段階か、麻痺の程度は軽度、中程度、重度のいずれかを尋ねました。
医師からは片麻痺は重度であるとの回答が得られましたので、その回答を添付して異議申立資料としました。

(3) 結論
異義申立は私が被害者の代理人として被害者請求の方法で行いました。
その結果、片麻痺の程度は中程度以上と評価され、5級2号が3級3号と変更になりました。

 2つの異義申立から得られたこと 
高次脳機能障害が1級や2級の後遺障害であれば後遺障害診断書からかなり明白なので、認定等級が問題となることは余りないと思います。
問題は3級〜9級であり、自賠責基準の表現が抽象的になっていることから実際よりも軽い等級認定がなされることがあるということに注意しなければなりません。

基準については労災の基準(「労災補償 障害認定必携」 労働福祉共済会)でかなり詳しい説明がなされており、2例はそれにあてはめる形で異議申立をしました。
この2例のやり方は高次脳機能障害の異議申立の手法としては少なくとも私が知る限り公表はされておりませんので、異議申立を考えておられる方の参考になると思いHPにアップすることにしました。

 ※H26.7.3追加 
平成25年に高次脳機能障害で異議申立が成功しました。
2級(随時介護)の方が1級(常時介護)となった事案であり、カルテを基本的な資料として異議申し立てをしました。
異議申立では5級→3級の例と同様、片麻痺が十分に評価されていないことをポイントとしました。5級→3級の方は杖を使用して歩行できる状態でしたが、2級→1級の方は車椅子で移動するという状態であり、常時介護が妥当であると考えた事案です。