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示談で解決できない場合

損保との示談交渉が難航した場合は、交渉を打ち切り、中立、公平な第三者を間に入れ、「場を変えて」話を進めるべきです。「場を変える」ことにより、意外な進展が見られることも珍しくありません。
ここでは損害が軽微な事案につき、被害者が弁護士を代理人とせず、自分で申し立てることを前提として、調停等の手続きにつき説明します。


示談交渉が難航した場合、具体的には
1 調停を申し立てる
2 交通事故紛争処理センターに示談斡旋を申し立てる
3 日弁連交通事故相談センターの示談斡旋を申し立てる
4 訴訟を提起する
と言う手段をとります。
1.2.3は基本的には「示談」ですから、双方の譲歩がなければ解決しません。法律的に正しい損害賠償額をつきつめると言うよりも、どの辺りで折り合えるかと言うことに主眼がおかれます。そうした解決が嫌だと言う方は訴訟を選択することになります。


 調 停 

どの裁判所に申し立てるか
物損の場合は相手方(加害者)の住所を管轄する簡易裁判所、人身損害の場合はあなた(被害者)もしくは相手方(加害者)の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てます。

費用
印紙代と若干の郵便切手代が必要となります。印紙代は請求額により異なり、請求額が大きくなればなるほど印紙代も高くなります。請求額が100万円の場合、印紙代は5300円程度ですので、そこからある程度の感覚はつかめると思います。印紙代が幾らかは裁判所に聞けば教えてくれます(切手代も聞くと良いでしょう)。

どうやって申し立てるか
簡易裁判所には交通事故用の申し立ての書式が用意してありますので、それに記入すれば良いようになっており、申立書の作成は簡単に出来ます。

調停とはどのような手続か
調停は簡易裁判所を利用した話し合いです。当事者の間に調停委員が立ち、公平に話しを進めていきます。しかし、話し合いですから、相手方が出頭しなかったり、話し合いに応じなければ調停手続きを進められないことになりますが、素人でも出来る手続きですので、利用しやすいと言え、我が国では広く利用されている手続きです。

調停委員は弁護士をはじめとして色々な職業の方がなされているのですが、法律的な知識が無くトンチンカンなことを言う方もまれにおります(トンチンカンなことを言う弁護士の調停委員もおります)。紛セに比べて委員のあたりはずれが大きいと言うデメリットはあると言えるでしょう。

どのような事案が調停に向いているか
損害額の大きくない物損、人身損害等は自分で調停を申し立てるのが一番、良いと思います。実際、弁護士に依頼せず、自分で調停申立てする方は結構、おられます。

調停手続については過小評価する向きもありますが、私はそうした見解には反対です。調停にはかなり大きな紛争解決能力があると言うのが私の実感です。

交通事故紛争処理センターと比べてのメリット、デメリット
・調停のメリット1
物損や軽微な人身事故ではもともと、金額が大きくなりなりません。慰謝料につき紛争処理センターで裁判基準で算定すると言っても調停での解決と大きな差は生じない場合もあり、そうした事案は調停での解決に向いています。
・調停のメリット2
加害者が任意無保険、被害者が治療中でも調停の申し立てができます。治療費、当面の生活費を支払って欲しいと言う内容の調停です。
・調停のメリット3
簡易裁判所は日本各地にあるので、被害者に便利。

・調停のデメリット1
調停委員には色々な方がおり、交通事故のことを全く分からない方もおられます。その点、紛争処理センターの斡旋委員は全員それなりのレベルです。
・調停のデメリット2
話し合いが決裂した場合、調停は打ち切りとなり、訴訟を提起しなければなりません。紛争処理センターでは審査に持ち込めます。


 交通事故紛争処理センター

どんな団体か
財団法人です。損保が資金を出していますが、損保には厳しい所と言われています。
センターの本部は新宿にありますが、大阪、名古屋、札幌、福岡、広島、高松、仙台にも支部があります。

費用はいくらかかるか
無料です。印紙代も郵便切手代も不要です。

手続きをどのようにして始めるか
まず、電話で相談の予約をします。予約日に相談担当の弁護士(嘱託弁護士)に相談をし、示談の斡旋が必要であるならば次回から相手方(加害者側保険会社の担当者)を呼び出します。
なお、物損のみの場合、紛セでやってくれるか念のために尋ねておいたほうが良いと思います。

<補足 紛争処理センター申立て準備> 
被害者が弁護士に依頼せず、自分でやる場合は第1回期日に以下を準備する必要があります(勿論、事案によって異なりますが)。損保に原本を出しているものについては損保からコピーを貰っておいたほうが良いでしょう。また、どこが争点となっているか簡単に説明できるようにしておく必要があります。
1  交通事故証明書
2  診断書、後遺障害診断書
3  加害者の住所・氏名、加害者側損保の担当者、連絡先
4  入通院日数を明確にしておく
5  休業損害証明書
6  収入を証明する資料(源泉徴収票、課税証明書、事故前、事故後のもの)
7  後遺障害等級認定票、認定理由書
8  事故状況を説明する図面(ないし、刑事記録)
9  陳述書(場合によっては用意したほうが良い、参考資料)
10  既払い額
(被害者に支払われたものだけでなく、病院に直接支払われた治療費も含む)
11  損保側からの示談案

なお、弁護士が被害者代理人となって紛争処理センターに申し立てをする場合は訴訟を提起する場合と同じ程度の準備をします。訴状の代わりに申立書を 作成し、その他、証拠資料を添付します。そして、第1回期日前に損保側に一件資料を送付しておきます。

何回くらいで示談が成立するか
物損ならば3回程度、人身ならば5回程度で7〜8割は示談が成立すると言われています。

示談が成立しなかったらどうなるか
被害者の申し立てにより、審査に入り、一種の裁判である裁定を下します。
この裁定には保険会社は拘束されますが、被害者は拘束されません。つまり、裁定が不満なら被害者は改めて訴訟を提起出来るのです。従って、極めて有利です。

なお、審査に入った段階で審査会が示談案を提示することがあります。また、示談による解決のプロセスは踏まずいきなり裁定を下すこともあります。私の経験では審査会が示談案を提示すると言うケースのほうが多いと感じております。

センターでの解決に馴染まない事案は
事故状況について被害者と加害者の主張に大きく違いがある場合、後遺障害の認定を争う場合(自賠責保険の認定よりも重い等級の後遺障害が残ったと主張する場合)、事故と傷害の因果関係が争点の場合です。

つまり、事実認定を必要とする事案です。こうした事案は訴訟でしか解決出来ないからです。こうした事案をセンターに申し立てても取り下げるように要請されます。

なお、加害者側に任意保険がついていない場合もセンターには不向きと言えます。最近、何でも紛セに持っていけば被害者に有利に解決できると言う風潮がありますが、現実には紛セで示談が成立していない件も多数あることに留意すべきです。

紛セを体験した私の感想
紛セに申し立てをすると損保側は弁護士をつけて対抗する等、かなり徹底的に争ってくることもあります。例えば、示談交渉時において被害者無過失の案を出していた損保が紛セでは5割の過失相殺を主張して来たこともあります。また、後遺障害が残存した事案では損保側が顧問医の意見書などを証拠に出し、労働能力は失われていない等の主張をしてくることもありました。

私のこうした体験から紛セでの示談斡旋も訴訟と同様、基本的に素人が自分でやるのは困難と言う印象がします。勿論、すべてが困難と言うわけでは無く、後遺障害が無い事案、むち打ちや打撲等の軽傷事案、物損程度は弁護士をつけなくとも大丈夫でしょう。また、後遺症の等級が14級の場合や逸失利益の生じない後遺症の場合などは弁護士をつけずにやれるとは思います。いずれにしろ、死亡事故や後遺症が認定された事案で被害者が自分でやれるのは例外的な場合だと心得て下さい。

調停、日弁連交通事故相談センターの示談斡旋とどちらが良いか
交通事故紛争処理センターの方がベターです。但し、紛争処理センターの所在地は限られておりますので、利用できない方もおられることになります。また、裁定の拘束力が及ばない損保(例えばタクシー共済等)はセンターがベターとは限りません。示談が成立しない場合は、訴訟等で出直しが必要となるからです。


 日弁連交通事故相談センターへの示談斡旋の申立て
詳しくは「相談・機関と方法」をご覧下さい。
 


 訴 訟
以上の方法での解決が不可能な場合は訴訟しかありません。
軽微損害では当事者が感情的になり死亡事故や重度後遺症事案よりも交渉がこじれることがあります。損害額が少ないほど解決が難しいという現象は弁護士をしていればしばしば目にします。
典型例として、物損において、事故状況について主張が真っ向から対立していると言う事案です。この種の事案は自分の主張を否定されると名誉を毀損されたと感ずる方もおられ、修理代20万円〜30万円の事案で揉めに揉めているということがあります。

特に物損については事故状況が問題となる以外に、保険会社が全損時の買替諸費用を認めない、過失相殺のある場合は代車代を認めない、格落ち損害を認めないと言う態度をとっており、示談交渉が難航する原因を損保側が作り出していることもあります。

こうした事案を弁護士に依頼しないで自分で訴訟(本人訴訟と言います)をすることはリスクが大きいのですが、と言って、弁護士に依頼すると弁護士費用の方がかかり(最低20万円はかかるでしょう)、費用倒れなってしまいます。そこで、リスクを覚悟でやむを得ず本人訴訟をしなければならないと言う事態も起こります。

最近、弁護士費用特約により少額事案でも弁護士に依頼した場合、費用倒れにならないことも多くなりました。特約の有無については必ず確認しておく必要があります。