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訴訟はどのようにして行われる

依頼者からの問い合わせも多く、標準的な訴訟の進行をまとめました

 訴訟準備段階
被害者側にとってはこの段階が重要です。
被害者側の主張をどう構成するか、損保側の予想される主張に対し、どう対処するか考えておかねばなりません。

そのため、刑事記録の取り付けをします。しばしば、訴訟がはじまってから文書送付嘱託で取り寄せをする弁護士がおりますが、タイミングとしては遅すぎます。損保側の過失相殺に対する主張に対しては反論を訴訟提起前に考えておく必要があります。

また、医学論争になると予想される場合は、カルテ取り寄せ、主治医に新たな診断書を作成して貰う、弁護士照会を行うなどしておきます。

損保側は逸失利益について当然、争ってきます。喪失期間を制限したり、喪失率を自賠責の数値より低いと主張します。また、症状固定後も収入減少がない場合は「差額説」の立場から逸失利益は生じないと主張します。これらの予想される主張に対し、準備をした上で訴訟提起をします。

 訴訟提起
訴訟提起が第1歩です。
訴訟提起のためには訴状の作成が最低限必要ですが、訴状の内容を裏付ける証拠を同時に提出します。

被害者側の弁護士は訴訟提起に十分な時間を使います。訴訟は1ヶ月に1回の間隔で開かれるので、期日と期日の間隔が十分にあるわけではありません。そのため、訴訟提起までの時点で予想される被告の主張を想定し、反論を準備しておく必要があります。

また、五月雨式に主張や証拠を出していくと時間がかかるので、訴訟提起の時点で書証(書面の証拠)は刑事記録や陳述書まで出せるものはすべて出してしまう必要があります。
弁護士は陳述書を通常、訴訟提起と同時には提出しません。しかし、交通事故訴訟では過失相殺、休業損害、逸失利益、慰謝料と争点が予め決まっているので作成が可能なのです。

 期日指定 
訴訟提起から3日〜1週間で裁判所から第1回期日が指定されます。訴訟提起から1〜2ヶ月の間に第1回期日が指定されます。
裁判所は原告代理人の都合を聞いてきますが被告の都合は聞きません。

 答弁書提出 
第1回期日前に被告から答弁書が提出されます。
被告の準備期間が不足して十分な答弁が出来ない場合は、「追って、主張する」と記載されます。

 第1回期日 
訴状陳述、答弁書陳述と言う手続きが行われます。「陳述」と言っても実際に陳述するわけではありません。裁判官が「原告代理人は訴状を陳述しますね」と聞き、原告代理人は「はい」と答えると言う方法で陳述手続が行われます。
第1回期日は被告代理人の都合を聞かないで指定されるので、被告側は欠席と言う場合もしばしばあります。これは民事訴訟法上認められております。
また、第1回期日でも被告側が欠席したまま答弁書の陳述が可能ですが、この場合は「擬制陳述」と呼ばれます。

答弁書に認否の方法は「認める」「不知」「否認」の3つがあります。
「認める」は原告と被告との間に争いがないのですから、原告が証明をすることは不要となります。
「不知」も「否認」も被告のほうで特に理由を付していないならば、裁判所は被告は積極的には争う意思はないと判断します。
しかし、理由をつけて否認をしている場合は原告が反論をする必要が生じます。

しばしば、被害者の依頼者から「この点が重要だから書面にもっと書いて欲しい」と要請されることがありますが、重要な点であっても「争いがない」あるいは「被告が積極的に争う態度を示さない」事実については訴状の記載を超えるような詳細な主張をする必要がないと言えます(この辺りで弁護士と依頼者がトラブルが生じます。依頼者からすれば弁護士の言っていることは不十分と見えるからです)。

訴状と一緒に提出した書証(書面の証拠、甲○号証)が取り調べられます。「取調べ」と言うのは裁判官が原本のあるものについては原本を確認するという手続きです。

また、第2回期日が指定されます。

第1回期日は僅かな時間(数十秒〜2、3分)で終了します。

 第2回期日 
被告が答弁書で十分、主張が出来なかった場合は、第2回期日に「準備書面」と言う書面で具体的に主張をすることになります。
また、被告が答弁書で十分に主張を尽くしているならば、原告が第2回期日に答弁書に対する反論を「準備書面」の形でします。

いずれも「準備書面」は期日の1週間前位には裁判所、相手方に送付する必要があります。

 第3回期日以降 
以上のような形で訴状陳述→答弁書陳述→原告の反論の準備書面→それに対する被告の反論の準備書面・・・・と言った形で訴訟は進み、主張すべきことが出尽くされる までつづきます。
第1回期日は法廷で行われますが、第2回期日以降は「準備手続室」で行われることが多いと言えます。

こうした手続は「主張整理」「争点整理」のため行われており、法廷で行われる場合は「口頭弁論」ないし「弁論」、準備室で行われる場合は「弁論準備」ないし「準備手続」と呼ばれています。

この段階では書面を提出するということが主たる手続です。また、陳述手続は前記の通り行われますので、裁判は5分もかかりません。

依頼者の中には裁判を傍聴したいと言う方がおられます。自分が関わっている裁判の行方は気になって当然ですが、裁判所での弁論や準備手続は形式的な手続ですので弁護士は依頼者に出頭を求めません。

裁判所での弁論、準備手続は形式的ですが、内容的には非常に重要な手続です。
何故なら、弁論、準備手続で原告、被告の主張を記載した書面が提出され、それで裁判は7〜8割は終わってしまうからです。
この段階での弁護士の仕事は書面の作成です。そうした意味では民事弁護士の能力とは書面の作成能力と言って良いでしょう。

<補足、依頼者と弁護士との関係>
この段階での依頼者の役割は弁護士が作成した書面のチェックです。そのために弁護士は裁判期日より相当、早い時点で書面を作成、依頼者に送付します。

依頼者はしばしば自分の主張を準備書面に記載するように要望しますが、多くは屋上屋を重ねる無駄な主張、主張する必要のない争いないもの、証拠のないもの、訴訟の本筋とは関係がないもの等です。こうした依頼者の要請は弁護士に大きなストレスを与えます。弁護士としては依頼者にその努力や熱意が無意味であることを時間をかけて説得しなければならず、その説得により弁護士、依頼者双方が不愉快になります。
また、相手方の書面に対して過度に感情的になり、動揺することも弁護士は嫌います。
訴訟が順調に訴訟が進んでいるにもかかわらず、依頼者の要請や訴えに辟易し、弁護士がこの段階で辞任することも珍しくありません。依頼者としてはこうした弁護士心理にも留意する必要があります。

 和解、証拠調べ 
原告、被告の主張が出尽くした時点で裁判所は原告、被告に「どのような進行をご希望ですか」と聞いてきます。これは和解手続に入るか、それとも判決を求めるか、判決を求めるならば次回、何をするかと言うことを聞いているのです。

以降のパターンとしては次の5つがあります。
A 和解手続に入り、和解が成立
B 和解手続に入ったが和解成立に至らず、証人尋問をしてそれが終わった時点で再び和解手続に入り、和解成立
C 和解手続に入ったが和解成立に至らず、証人尋問をして判決
D 和解手続に入らず、証人尋問をしてそれが終わった時点で和解手続に入り、和解成立
E 和解手続に入らず、証人尋問して判決

 証人尋問をする場合 
依頼者の証人尋問をする場合はリハーサルをします。弁護士のほうが尋問事項の大筋を考えて、本番形式で尋問をして依頼者に答えて貰います。
また、尋問事項自体を依頼者と協議しながら考えると言う面も相当あります。
リハーサルが1回で終了しない場合は、2回、3回とやります。

但し、依頼者に尋問すべきことは多くは陳述書で陳述済みですので、依頼者の弁護士からの尋問時間は余り多くありません。むしろ、相手方の弁護士に対する反対尋問のチャンスを与えると言う意味合いが大きいと言えます。そうした意味で相手の弁護士が尋問しそうな点を予想し、どう答えるか打ち合わせをします。

 判決後の動き 
まず、民事事件の判決では原則的に代理人は法廷に出頭することはしません。刑事事件では例外なく、判決の言い渡しを 聞くため弁護士が出頭しますので、大きな違いがあります。

弁護士は判決の結論(主文)を電話で裁判所から聞き、メモをとります。
弁護士はまず主文のみを依頼者に教えます。
2〜3日後には判決書が送られて来ますので、それを依頼者に送り、控訴すべきかいなかを検討します。

 控訴手続 
控訴すると決まった場合は依頼者から新たに委任状を取り、直ちに控訴手続をとります。
控訴は判決書を手にしてから2週間内にする必要があります。
控訴は「相手の控訴に乗っかる」と言う形の附帯控訴もあります。

控訴審は高等裁判所ですが、控訴手続をするのは1審の裁判所です。

どちらが控訴するか、どのような控訴をするかに関しては以下の通りとなります。
1 双方とも控訴しない。この場合は1審の判決が確定します。
2 こちらが控訴して、相手方も控訴する
3 こちらが控訴して、相手方が附帯控訴をする
4 こちらが控訴して、相手方は控訴も附帯控訴もしない
5 相手方が控訴して、こちらが附帯控訴する
6 相手方が控訴して、こちらは控訴も附帯控訴もしない

以上は最もシンプルな形での進行です。こうした手続の中に鑑定、カルテ取寄せ、調査嘱託等々が入り、標準的な進行が様々に変形します。